サーベイに関するバイアスの話
はじめに
昔、研究とよばれることをしていた。
大学院生の頃だろうか。
研究の中で重要なフェーズに、「サーベイ」というものがある。
これはざっくり言えば、
過去の関連研究に関する資料を探してきて、
きっちり研究の背景を理解したりすることだ。
そして、サーベイを行った結果、
自分の現在進行中の研究が関連研究とどのように違うのかを説明する材料にしたり、
新しい問題について考えたりする。
本題
研究をやめて、働き出して数年後、
ふとしたきっかけで、「メタ・アナリシス [丹後02]」と呼ばれる分野を知ることになった。
メタ・アナリシスとは、サーベイをして得られた、
複数の資料それぞれの主結果に関する
質のよしあし関して整理して、そこでの知見を情報処理するプロセスだ。
(ここも割とざっくりした説明なので関連書籍を読んでほしい。)
メタ・アナリシスの書籍 [丹後02] を読んでいると、
僕は、このことについてほとんど存じ上げなかったので、
驚いてしまった。しかもかなりまとまっている。
どれくらいこういう考え方が共有されているかはわからないが、
[丹後02] を参考に、公表バイアス、英語バイアス、及び多重公表バイアスについて、
少しだけここにまとめたい。
・公表バイアス
ポジティブなタイプの論文 (e.g. 何かができました、何かを作りました、~であることがわかりました。というようなことを示すようなもの) は公表されやすいが、そうでないものは公表されにくい。結果、これがバイアスとなる分野がある。
・英語バイアス
国内外に論文を投稿するわけだが、この際に国内外それぞれにどういうタイプの論文を投稿するか ([丹後02] によれば良い結果は英語で、そうでもない場合は母国語でという分野もあるらしい) というものは分野ごとに異なる。すると、このことはバイアスになる。
・多重公表バイアス
良い結果が出た場合、何度も発表されたり出版機会が多くなる分野があるらしい。この場合、これもバイアスになる。
まとめ
研究から離れて、自分が行っていた「サーベイ」というものを遠くから眺めてみると、自分なりのサーベイの技法を確立したつもりだったが、まだまだ質のよい研究をするためにやるべきことがたくさんあるようだった。いつか研究を再開する日に、この周辺についてもう一度考えようと思う。
参考文献
[丹後02] メタ・アナリシス入門. 朝倉書店